透析の指標
維持透析患者の貧血コントロール(Hb 10~12g/dl)割合
- 分子・分母
- 分子:Hbが10 g/dl以上12g/dl未満の間にコントロールされた患者数
分母:維持透析患者数
- 指標の説明
- 腎臓は、造血ホルモンであるエリスロポエチンを分泌します。腎機能が失われると、エリスロポエチン分泌不全となり、腎性貧血をきたします。赤血球造血刺激因子製剤(ESA)とHIF-PH阻害薬の臨床での使用により腎性貧血の治療は大きく改善しました。
貧血は血液ヘモグロビン濃度(Hb)で判断されます。当院では国内・国外ガイドラインを基にして、貧血改善のアルゴリズムを作成し貧血のコントロールに活用しています。2015年度までは、Hb10~11.5g/dlを目標としていました。2016年度以降は、2015年度版 日本透析医学会の「慢性腎臓病患者における腎性貧血治療のガイドライン」に基づき、Hb10g/dl以上12g/dl未満を目標としています。
- 指標の種類
- プロセス
- 考察
- 日本透析医学会のガイドラインに基づく貧血治療の目標を達成している透析患者比率は、2023年度は前年に比べ0.3ポイント上昇し、61.9%の結果でした。
当院では、貧血関連の定期血液検査を毎月実施し、医師と透析スタッフで腎性貧血対策チームを組み、HIF-PH阻害薬の適切な投与と、鉄代謝に配慮したきめ細やかな薬剤調整を心がけています。
維持血液透析および維持腹膜透析の透析量
- 分子・分母
- 分子:Kt / Vの値が1.2以上の患者数、Kt / Vの値が1.4以上の患者数
分母:維持血液透析患者数
- 指標の説明
- 透析療法の目的は、失われた腎臓機能にかわって、体内の尿毒素を除去することにあります。小分子量尿毒素を適正に除去しているかの指標のひとつが、尿素の標準化透析量(Kt / V)です。Kt / Vが大きいと、透析により浄化される体液量が多いことを示しています。日本透析医学会の「維持血液透析ガイドライン:血液透析処方」において、最低確保すべき透析量としてKt / V1.2が推奨され、目標透析量としてはKt / V1.4以上が望ましいとされています。
- 指標の種類
- プロセス
- 考察
- 2023年度のKt / V値1.2以上の透析患者の比率は、92.0%でした。また、Kt / V1.4以上の透析患者の比率は、70.2%に達しています。
当院では、小分子量尿毒素除去の透析量の指標としてKt / Vを、中分子量尿毒素除去の透析量の指標として、血中β2ミクログロブリン値を毎月検証しています。また、病態の急変時にも速やかにダイアライザーや透析条件を検証し、きめ細やかな透析医療を提供しています。
血清補正Ca値・血清P値
- 分子・分母
- 分子:血清補正Ca値8.4~10.0mg/dl、P値 3.5~6.0mg/dlにコントロールされた患者数
分母:維持透析患者数
- 備考(除外項目等)
- 毎月2回実施される測定値の年間の平均値をその患者の代表値として統計処理をした
- 指標の説明
- 腎臓は、生体のミネラル調整システムの中で重要な役割を果たしています。その機能が低下すると、ミネラル代謝異常をきたし、骨や副甲状腺の異常のみならず、血管石灰化等の原因となり、生命予後に大きな影響を与えることが確認されています。この病態は、慢性腎臓病に伴う骨・ミネラル代謝異常(CKD-MBD)と呼ばれています。日本透析医学会の「慢性腎臓病に伴う骨・ミネラル代謝異常の診療ガイドライン」では、血清P値3.5~6mg/dl、血清補正Ca値8.4~10mg/dlを管理目標値としています。なお、この管理目標値は2024年度に改定予定です。
- 指標の種類
- プロセス
- 考察
- 2023年度の血清補正Ca値8.4~10mg/dlの管理目標値を達成している透析患者の比率は、85.7%でした。
また、血清P値3.5~6mg/dlの管理目標値を達成している透析患者の比率は、2015年度に60%未満となりましたが、2016年度から60%超えとなり、2023年度は62.2%を示しました。
当院では月2回の血液検査を実施し、ガイドラインに沿った薬剤調整を行っています。栄養士による患者指導にも力を入れており、食事療法の改善と薬剤のアドヒアランス向上を図っています。