感染対策の指標
中心ライン関連血流感染発生率・使用比
- 感染率 分子・分母
- 分子:当月の中心ライン関連血流感染を生じた患者数
分母:当月入院患者の中心ライン留置置延べ日数/1000
- 使用比 分子・分母
- 分子:中心静脈カテーテル留置延べ日数
分母:延べ入院患者数
- 備考(除外項目等)
- 感染率の単位 ‰
使用比の単位 %
- 指標の説明
- 厚労省研究班の推計によると、日本での中心静脈カテーテル関連血流感染による年間死亡者数は少なく見積もって5,000~7,000人いるとされ、ICUにおいては中心静脈カテーテルの留置が退院時の患者死亡のリスクを増加させることも示されています。中心カテーテル関連血流感染対策は医療関連感染対策の重要な柱のひとつとなっています。
- 指標の種類
- アウトカム
- 考察
- 2025年度は、感染率・使用比ともに前年より低下傾向となりました。日本の一般病棟におけるCLABSI発生率は、約1.8件/1000CL-days (JHAISデータ)となっており、2024年以降は、全国のベンチマークを下回っています。過去の感染率上昇の要因として、挿入時の皮膚の清浄度を上げる処置や適切な手指衛生の実施不備、点滴実施時の適切な消毒、マキシマルバリアプリコーションの実施率の低下が推察されます。特に、2023年頃まで消毒前の刺入部位皮膚洗浄の実施率が低下傾向となっていた為、現状をフィードバックし、学習と管理手順の見直しを実施しました。現在は刺入前の消毒効果を高める皮膚洗浄は、約80%以上となっており、感染率低下の一因と考えられます。CLABSIの60~70%は適切な予防策により防止可能とされており、今後も安全なカテーテル管理を目指し感染率減少のために、適切な挿入部位の選択、カテーテル管理、適応の検討、早期の抜去などの対策を継続し、定期的な評価をおこない、必要な対策を実施していきます。
- 参考文献
- 日本環境感染学会(JHAIS)医療器具関連感染サーベイランス
尿留置カテーテル関連尿路感染率・使用比
- 感染率 分子・分母
- 分子:尿留置カテーテル関連感染者数
分母:当月入院患者の尿留置カテーテル留置延べ日数
- 使用比 分子・分母
- 分子:尿留置カテーテル留置延べ日数
分母:延べ入院患者数
- 備考(除外項目等)
- 感染率の単位 ‰
使用比の単位 %
全部署で実施:2階西病棟、3階南病棟、3階北病棟、4階南病棟、4階北病棟
- 指標の説明
- 尿路感染は医療関連感染の約40%を占めており、そのうち66~86%が尿道カテーテルなどの器具が原因です。いったん尿道カテーテルを挿入すると15日までに50%、1ヶ月までにほぼ100%尿路感染を起こすといわれています。尿路感染は一般的に重症化することなく無症状で経過することが多いのですが、ハイリスク患者では膀胱炎、腎盂炎、敗血症に至ることがあるため、管理を徹底することが重要です。尿留置カテーテル関連尿路感染対策は医療関連感染対策の重要な柱のひとつとなっています。
- 指標の種類
- アウトカム
- 考察
- 2025年度は病棟機能の変更などにより、内科の緊急入院患者が増加しました。治療初期段階にカテーテル挿入が必要な患者が昨年度同様に一定数入院されており、使用比は変化がみられなかった。感染率は減少傾向に転じている。減少傾向となっている要因として、尿道留置カテーテル挿入者は、挿入時、挿入中、抜去時、抜去後にアセスメント記録を入力し、チームで情報共有を実施し抜去のタイミングを日々検討している。その他、カテーテル挿入時の管理、尿バックからの廃棄方法、尿を扱う際の適切な手指衛生やPPEの着脱なども毎年実践型研修を実施している。
日本の一般病棟におけるCAUTI発生率は、約1.8-2.0件/1000UC-days(JHAISデータ)となっている。当院は感染率が減少傾向であるが、全国ベンチマークと比較すると高い状況となっている。今後もカテーテル関連尿路感染予防をCDCガイドラインに基づき、安全なカテーテル管理を実施していきます。特にガイドラインでは、不要なカテーテルの早期抜去と、挿入適応の厳格化が最も効果的な介入として位置づけられており、引き続き挿入前後のチームでの情報共有とアセスメント、適切な尿カテーテル管理、学習を継続し、院内の尿路感染防止に努めて行く事が重要であると考えています。
- 参考文献等
- カテーテル関連尿路感染予防のCDCガイドライン 2009
日本環境感染学会(JHAIS)医療器具関連感染サーベイランス
血液培養実施件数
- 指標の説明
- 抗生剤の適正使用は、①細菌の同定(Fever workup)、②推定的治療(Empiric therapy)、③確定的治療(Definitive therapy、推定的治療から確定的治療の切り替えをDe-escalation
と言います)、④抗生剤の速やかな終了から構成されています。血培実施件数は、日常診療の中で細菌の同定の努力が適切に実施されているかどうかをみる指標として設定しました。
- 指標の種類
- プロセス
- 考察
- 2025年度の血液培養の実施件数は1009件で、2024年度から減少していました。発熱時の採取や陰性確認など、血液培養が必要な場面での実施はある程度定着してきていると思われますが、COVID-19の流行が落ち着いて、発熱で受診する患者が減少したことが要因の一つと考えられます。
血液培養の適切な陽性率は5~15%で、これより高い場合は本来血液培養を実施すべき患者に実施していない可能性や、コンタミネーションが多すぎる可能性があります。2025年度の陽性率は23.0%で、2024年度の15.6%から増加していました。まだ十分な実施件数に達していない可能性が考えられます。当院では陽性率15%未満を目標に、培養検査の必要性についての全体学習を行うなど、血液培養実施件数増加のための取り組みを行っています。目標を達成に向け今後も啓蒙活動を続けていきます。
- 参考文献等
- CUMITECH血液培養検査ガイドライン,医歯薬出版株式会社
血液培養のボトルが複数提出された 患者の割合
- 分子・分母
- 分子:同一日の血液培養検査で複数の培養ボトルが出された延べ患者数
分母:血液培養検査が行われた延べ患者数
- 指標の説明
- 重症感染時には菌血症(血液中に細菌がいる状態)を伴うことが少なくありません。この血液中の細菌を検出する血液培養は、1セット採取よりも2セット採取の方が、検出感度が良好であることが知られています。また、2セット採取は原因菌か採取時の汚染かを判定するためにも重要です。
- 指標の種類
- プロセス
- 考察
- 2025年度の実施率は、98.3%と前年と同様に高水準を維持しています。複数セット採取率向上のために、2009年度に「血培2セット」として、検査室からトレイにて2セット払い出すシステムへ変更し、定期的に複数セット採取について広報を行ってきました。現場スタッフの努力もあって、複数セット採取が定着し、2015年から97%以上と高率を維持できています。複数提出ができていない要因は。1セットのみ提出の場合は、採血困難等の理由で2セット分の採血ができず、中止になったケースがほとんどです。」
- 参考文献等
- Quality Indicator 2010「医療の質」を測り改善する(聖路加国際病院の先進的取り組み) インターメディカ
血液培養での表皮ブドウ球菌コンタミネーション率
- 分子・分母
- 分子:表皮ブドウ球菌のコンタミネーション延べ患者数
分母:同一日の血液培養検査で複数の培養ボトルが出された延べ患者数
- 指標の説明
- 血液培養を実施する際、皮膚の常在菌が混入し、しばしば結果の解釈に問題を生じます。この指標は、血液培養の採血時、常在菌の混入を防止するため、適切な手技がどの程度行われているかをみる指標です。
- 指標の種類
- プロセス
- 考察
- CUMITECH血液培養検査ガイドラインでは、コンタミネーション率の目安は2~3%以下とされています。コンタミネーション率を低く保つためには現場スタッフに対する継続的な教育や、採血環境の整備などが重要となります。
2025年度のコンタミネーション率は0.70%と2024年度と比較してやや増加しましたが、ガイドラインの目安を下回っており適性範囲内と考えられます。2022年度の下半期に行った消毒方法の変更が効果的であったことに加え、2022年度から定期的に行っている血液培養採取手順についての学習によって、採取に携わる職員の意識が向上し、消毒手技が定着したことが要因と考えられます。今後も水準内を維持できるよう広報・教育を継続していく必要があります。
- 参考文献
- CUMITECH血液培養検査ガイドライン
中心静脈カテーテル挿入時のマキシマル・バリアプリコーション(高度無菌遮断予防策:MBP)実施率
- 分子・分母
- 分子:マキシマル・バリアプリコーション実施数
分母:新規中心静脈挿入件数
- 指標の説明
- 末梢静脈カテーテルと比較して、中心静脈カテーテルは感染の危険性が高く、中心静脈カテーテル挿入や管理には十分な注意が必要です。中心静脈カテーテル挿入時にはマキシマル・バリアプリコーション(MBP)が不可欠な感染対策であり、手指衛生に加えキャップ・マスク・滅菌ガウン・滅菌手袋・大型滅菌全身用ドレープが用いられます。MBPは、標準予防策(滅菌手袋・小さいドレープ)と比較すると中心静脈カテーテル関連血流感染の発生率を減少させることが実証されています。
- 指標の種類
- アウトカム
- 考察
- 2025年のMBP実施状況では、滅菌ドレープ使用率やサージカルマスク・滅菌手袋の装着率は100%を維持できていますが、医師の個人防護具装着では緊急処置時にキャップや、ガウンが未着用であった例があり、2025年度のMBP実施率は85.7%でした。当院では、CVカテーテル挿入時には「CV挿入実施報告書」を提出する取り組みを採用しており、挿入時の手技に関する詳細なデータ集計を継続しています。2011年のCDC改定ガイドラインでは、強い根拠をもとに推奨区分カテゴリーIBに位置づけられており、JHAISのサーベイランスデータでも、MBP遵守率の向上がCLABSI発生率低下に寄与していると考えられています。当院のMBP実施率は2021年から徐々に上昇していますが、ガイドラインではCVカテーテル挿入時のMBP実施率100%が求められており、引き続きマキシマル・バリアプリコーション実施率の改善のために、看護師・医師へマニュアルに沿った取り組みをすすめていきます。
- 参考文献等
- 血管内留置カテーテル由来感染の予防の為のCDCガイドライン2011
日本環境感染学会(JHAIS)医療器具関連感染サーベイランス
病棟における手指消毒薬使用量
- 指標の説明
- 医療環境で発生している多くの感染症は医療従事者の手指を介して伝播しており、手指衛生はすべての医療従事者が習熟すべき基本的な技術となっています。2002年にCDC(米国疾病対策センター)は手指衛生のガイドラインを改訂し、医療現場における手指衛生の基本として、簡便で消毒効果が高く、手荒れを起こしにくいアルコールベースの手指消毒薬を使用した方法を勧告しました。医療従事者の手指衛生実施の遵守状況の改善度を測定するために、手指消毒薬の使用量調査は有用となっています。使用量は病棟の各設置場所及び個人の実際使用した量を計測し表示しています。
- 指標の種類
- プロセス
- 考察
- 2020年以降は、COVID-19の流行により、院内での手指衛生の必要性の意識が高まり、年間の病棟でのアルコール手指消毒剤の使用量は毎年500L以上となっています。毎年全体学習で感染対策推進委員による手指衛生学習を計画・実施しています。2025年度も、「流水と石鹸での手洗い」と「手荒れ防止の適切なハンドクリームの使用方法」を各部署の推進委員が指導し、手指衛生が更に推進出来る環境作りを行った。手指衛生状況は、毎月の手指衛生使用量を部署毎にグラフ化し、フィードバックと具体的な改善策の提案を継続している。2021年からは手指衛生の遵守率測定を開始し、使用量と一緒に質評価も部署ごとに実施し、院内全体で手指衛生の状況を可視化することで意識が高まり、使用量が維持されていると考えています。今後も、「手指衛生は、適格性、プロフェショナリズム、敬意の証」を合い言葉に教育をすすめ、使用量の増加・遵守率の向上を目指します。
- 参考文献等
- 手指衛生等に関する文献:CDCの手指衛生ガイドライン2002年