医療倫理の指標
A,身体抑制割合 B,身体抑制1人あたりの抑制日数
- 分子・分母
- 分子:身体抑制を実施した延べ日数
分母:A,当月の入院患者延べ数 B,当月の身体抑制を実施した実患者数
- 備考(除外項目等)
- 抑制とは、抑制帯、抑制衣、ミトン、4点柵、車椅子用ベルトを含みます。
途中抑制を中止し、再度抑制した場合も含みます。
- 指標の説明
- 医療の現場では、自らの身に生じる危険を回避することが困難な患者・高齢者に対して、危険を回避する目的で、身体抑制を選択せざるを得ない場面があります。その際、身体抑制の必要性に関する判断は、患者の生命・身体の安全確保の観点から行い、必要最小限にとどめることが大切です。この指標は、身体抑制の実態を把握し、早期に抑制解除を行う努力が継続されているかを検証するものです。
- 指標の種類
- プロセス
- 考察
- 2019 年度は抑制割合9.03%と過去最多の割合となり、認知症ケア加算対象者での身体抑制割合も前年に比べ1.4 倍という結果でした。看護部倫理委員会では身体抑制を最小限にする取り組みを行うことを方針に掲げ活動をおこなってきましたが、この結果を受け強化が必要と考えました。2020年8月に「一般急性期病院における身体拘束を考える」Web研修会に参加し、10月の看護部倫理委員会で研修の報告会を実施しました。他医療機関で行われている身体抑制に対する取り組みを委員会メンバーで共有し、身体抑制に対する意識を変えていく働きかけを行いました。
2021年度は、看護部倫理委員会で各部署で実践した抑制解除に向けた取り組みや、最小限にとどめる取り組みを報告し、身体抑制の解除や、最小限にする方法を委員会メンバー間で検討し、検討内容を自部署に持ち帰りチームメンバーに働きかけました。委員会メンバーが自部署で中心となり推進することで、身体抑制割合の減少につながったと考えられます。今後の課題として身体抑制開始や継続の必要性についてアセスメントが不十分であることが報告であげられたため、アセスメントのマニュアルや書式の整備を行っていく予定です。
臨床倫理4分割法による事例検討数
- 指標の説明
- 医療現場では、医療関連領域の知識、技術だけでは対処できない様々な問題や葛藤に遭遇します。また、法、社会、文化、宗教に関わる問題も少なくありません。こうした倫理問題へ適切かつ迅速に対処することは、患者中心の医療を実践するためにはとりわけ重要な課題です。
臨床倫理4分割法は、患者の問題を、医学的適応、患者の意向、周囲の状況、QOLの4つのカテゴリーに分けてワークシートに記入し、問題を広い視野から眺め、最善の対応を見出すという方法です。当院では2008年からこの臨床倫理4分割法を導入し、医療ケアチームによる検討を通して現場での倫理的問題に対応しています。臨床倫理4分割法による事例検討数は、倫理問題への対処がどの程度できているかという指標です。また、具体的事例を通してスタッフの倫理教育がどこまですすんでいるかを示す指標でもあります。
- 考察
- 当院では2008年から臨床倫理4分割法による事例検討を始めています。2015年度に、倫理コンサルテーションチームを立ち上げ、院内の倫理課題に関する事例の集約をし、現場での臨床倫理の検討が必要な事例把握と対応を行っています。
2021年度は、4分割法による検討を37事例開催しました。そのうち14事例に倫理コンサルテーションチームが参加をしています。治療方針と患者の意思決定の間でのジレンマや、栄養経路に関する悩みなどの事例が多くありました。「透析治療を拒否する患者さんに対して今後の方針についての検討」や、「透析導入し、退院後より透析拒否され続けている患者さんへの対応」といった透析治療に関する事例は、透析医療を担う医療機関の特徴といえます。また、外来では各科で4分割事例検討を定期的に行う取り組みが行われ、外来患者の事例が多かったのも特徴的でした。
日常診療の場での倫理課題に「立ち止まり」、多職種で意見交換をすることで、患者さんにとっての最善の方針をとることができるよう4分割事例検討に取り組んでいきたいと思います。