チーム医療の指標

入院患者の他科診察の依頼割合

分子・分母
 分子:退院患者で入院中に他科受診のあった患者数
 分母:退院患者数
指標の説明
 多くの疾患を持っている入院患者さんの診療に対して、それぞれの専門の科に診療内容の確認や、協力を依頼することは、診療の透明度、チームワークの度合いを示すもので、医療の質を表します。
指標の種類
 プロセス
考察
 2022年度は41.5%と前年より1ポイント上回り、10年間で2番目に多い年となりました。
 当院の基本方針に明記している全人的医療の推進には、患者の問題を幅広く把握し、問題に応じた各科の協力体制が欠かせません。2022年度はコロナ禍ではありましたが、専門科間の相談、コミュニケーションがすすめられたと思われます。今後も専門科間の協力を進め、よりよいサービスの提供に努めたいと思います。

ケアカンファレンス実施率

分子・分母
 分子:退院患者のうち医師・看護師・コメディカルによるカンファレンス記録のある患者数
 分母:退院患者数
備考(除外項目等)
 電子カルテ上に、医師・看護師を含む3職種以上が参加したカンファレンス内容の記録があるものを条件としてカウントを行っています。
指標の説明
 患者の多面的な要求に応える医療やケアを実践するには、多くの職種による専門性の結集が不可欠です。初診時や定期的に開催される多職種カンファレンスは、こうした医療やケアの要であり、全人的医療の実践がどの程度できているかみるための指標として設定しました。全退院患者のうち、一度以上ケアカンファレンスが実施された比率をみたものです。
指標の種類
 プロセス
考察
 2022年度は36.0%の実施率で前年より3.3ポイント減少しました。この値は全日本民医連の2022年の中央値、60.97%を大幅に下回っています。
 医師が参加し、多職種で評価したことを情報共有し、患者の状況を把握することで、より適切な治療、社会的支援が推進されると思われますが、2016年をピークに減少し続けています。医師体制や、職種によってカンファレンスに対する意識が違ってきていること、コロナ禍で集合してのカンファレンスが困難であったこと等が要因と考えられます。再度、チーム医療、職員教育におけるカンファレンスの役割、あり方についての検討が必要と思われます。
 診療報酬上でもチーム医療が重視され、多職種でのカンファレンスの開催が様々な加算の算定要件となり、その記録は算定の根拠にもなっています。患者の多面的な要求に応え、必要な情報の共有が図れるよう、多職種カンファレンスにふさわしい内容の充実をすすめたいと思います。

リハビリテーション実施率

分子・分母
 分子:退院患者のうち、リハビリテーションを実施した患者数
 分母:退院患者数
備考(除外項目等)
 退院患者のうちPT/OT/STのいずれかのリハビリテーションを実施した事がある患者数
 但し3日以内退院は除く
指標の説明
 急性期病院に於けるリハビリテーションは、疾病治療に合わせた廃用症候群・合併症などの予防や機能改善を目的としています。そのため早期からのリハビリ介入が重要とされています。当院では入院後早期より多職種(医師、看護師、リハビリテーションスタッフ)で適応について相談しリハビリテーションを実施しています。
指標の種類
 プロセス
考察
 2016年度以降リハビリテーション処方のシステム管理や診療体制などを整備し、実施率の拡大を図っていきましたが2018年度をピークに減少傾向となっています。これは、対象者を拡大していくことにより、本来必要度の高い患者様へのリハビリテーションの提供量が十分に確保出来なくなったためです。2022年度は66.9%と前年より6.4ポイント減少しています。
 2022年の全日本民医連報告では実施率の中央値は58.49%、リハビリ実施単位数(総単位数/訓練実施日数)の中央値は2.56単位でした。2022年の当院のリハビリ実施単位数は2.0でした。
 単に実施率を追求するのではなく、より必要な患者様に良質なリハビリテーションが提供出来るように体制・体系整備を行うとともに多職種連携の強化や学習に努めていきます。
参考文献等
 厚生労働省「医療の質の評価・公表等推進事業」令和4年度全日本民医連報告

クリニカルパス利用率

分子・分母
 分子:クリニカルパス使用患者数(入院中複数のパスを利用していても1とする)
 分母:退院患者数
指標の説明
 クリニカルパスは、病気ごとに検査や治療、看護ケアなどの内容およびタイムスケジュールを一覧表にしたものを言います。わが国には1995年頃から導入され徐々に普及してきました。クリニカルパスの使用は、患者さんにとっては診療の予定が分かりやすいという利点があり、医療者にとっては科学的根拠に基づいた標準的な医療の実践、医療スタッフ間での情報の共有、チーム医療の推進に役立ちます。クリニカルパス使用の増加は、内容の分析・見直しにもつながり、医療の質の向上にもつながります。
考察
 2022年度のクリニカルパス利用率は27.8%で、前年から0.2ポイント減少しました。
パス利用数の4割を占める大腸カメラの件数が2021年度は404件、2022年度は403件とほぼ同数でしたが、退院患者数は2021年度3298人、2022年度3597人と約300人増加している事が要因と思われます。
 今後、パス利用率を伸ばすためには外科系のパス以外に、内科系のパスをすすめる必要があり、課題となっています。
 バリアンス分析からフレキシブルパス設定を行っているTCS検査については操作不備が
18.3%あり継続的に操作の周知が必要です。
 今後もバリアンス分析を継続しクリニカルパスの改善、新たなパス作成をより適切な運用で進めたいと思います。

褥瘡新規発生率

分子・分母
 分子:入院後に新規に発生した褥瘡患者数(1名の患者が複数発生しても、患者1名として数える)
 分母:調査月の新入院患者数+前月最終日在院患者数
備考(除外項目等)
 入院後に新規に発生した褥瘡を対象としています。DESIGN-R2020で評価。
 2021年度からは医療機器による褥瘡は含めない。
指標の説明
 褥瘡予防対策は、提供されるべき医療の質の重要項目であり、全身状態、栄養管理、ケアの質評価に係わる指標です。
指標の種類
 アウトカム
考察
 2022年度は前年度と比較して発生率が低下しました。2013年からの10年間で最も低くなっています。要因として、①エアマット管理システムを改善し、高機能エアマットの導入が促進された事 ②各病棟に対して「皮膚・排泄ケア特定認定看護師」が重点的に学習会等に介入したこと③看護教育での褥瘡セミナーを行った事、が挙げられます。
 MDRPU(医療機器関連圧迫創傷)の発生率は0.04%でした。MDRPUの発生率全国調査は、推定発生率0.24%2)とされており、当院の発生率は全国調査より低くなっています。
 今年度も引き続き褥瘡発生率の低下を目標とし、褥瘡発生率が1%以下となるよう推進していきたいと思います。また、MDRPUの発生率低下にも取り組んでいきます。
参考文献等
 1)日本褥瘡学会編:褥瘡予防・管理ガイドライン(第4版),20015.
 2)日本褥瘡学会編:ベストプラクティス医療関連機器圧迫創傷の予防と管理,2016.