チーム医療の指標

入院患者の他科診察の依頼割合

分子・分母
 分子:退院患者で入院中に他科受診のあった患者数
 分母:退院患者数
指標の説明
 多くの疾患を持っている入院患者さんの診療に対して、それぞれの専門の科に診療内容の確認や、協力を依頼することは、診療の透明度、チームワークの度合いを示すもので、医療の質を表します。
指標の種類
 プロセス
考察
 2021年度は42.7%と前年より1.9ポイント下回りましたが、入院中の他科へのコンサルトは定着していると考えられます。
 当院の基本方針に明記している全人的医療の推進には、患者の問題を幅広く把握し、問題に応じた各科の協力体制が欠かせません。専門科間の協力を進め、よりよいサービスの提供に努めたいと思います。

ケアカンファレンス実施率

分子・分母
 分子:退院患者のうち医師・看護師・コメディカルによるカンファレンス記録のある患者数
 分母:退院患者数
備考(除外項目等)
 電子カルテ上に、医師・看護師を含む3職種以上が参加したカンファレンス内容の記録があるものを条件としてカウントを行っています。
指標の説明
 患者の多面的な要求に応える医療やケアを実践するには、多くの職種による専門性の結集が不可欠です。初診時や定期的に開催される多職種カンファレンスは、こうした医療やケアの要であり、全人的医療の実践がどの程度できているかみるための指標として設定しました。全退院患者のうち、一度以上ケアカンファレンスが実施された比率をみたものです。
指標の種類
 プロセス
考察
 2021年度は39.3%の実施率で前年より2.1ポイント減少しました。この値は全日本民医連の2021年の中央値、58.32%を19.02ポイント下回っています。
 多職種で評価し情報共有することで、患者の状況を把握し、より適切な治療、社会的支援が推進されると思われます。また、チーム医療、職員教育におけるカンファレンスの役割、あり方についての再検討も必要かと思われます。
 診療報酬上でもチーム医療が重視され、多職種でのカンファレンスの開催が様々な加算の算定要件となり、その記録は算定の根拠にもなっています。患者の多面的な要求に応え、必要な情報の共有が図れるよう、多職種カンファレンスにふさわしい内容の充実をすすめたいと思います。

リハビリテーション実施率

分子・分母
 分子:退院患者のうち、リハビリテーションを実施した患者数
 分母:退院患者数
備考(除外項目等)
 退院患者のうちPT/OT/STのいずれかのリハビリテーションを実施した事がある患者数
 但し3日以内退院は除く
指標の説明
 急性期病院に於けるリハビリテーションは、機能・症状改善や廃用症候群・合併症などの予防や改善を目的としています。そのため早期からのリハビリ介入が重要とされています。また実施率は在宅復帰率などと共に重要な指標となっています。当院に於いても同様でリハビリテーション実施率は意義のあるものと考えます。
指標の種類
 プロセス
考察
 2016年度以降リハビリテーション処方のシステム管理や診療体制などを整備し、実施率80%前後の水準を保ってきました。2021年度は全入院患者の内、リハビリテーションが必要とされる方(高齢の方、身体機能や生活動作の制限がある方など)の割合が前年比で5%程度減少しており、実施率の減少に繋がったと考えます。一方で、2021年の全日本民医連報告では実施率の中央値は58.88%であり、依然高い水準を維持していると言えます。
 今年度以降は単に実施率を追求するのではなく、より必要な患者様に良質なリハビリテーションが提供出来るように、リハビリカンファレンスの実施や部門・専門チーム毎の学習、システム整備に努めていきます。
参考文献等
 厚生労働省「医療の質の評価・公表等推進事業」令和3年度全日本民医連報告

クリニカルパス利用率

分子・分母
 分子:クリニカルパス使用患者数(入院中複数のパスを利用していても1とする)
 分母:退院患者数
指標の説明
 クリニカルパスは、病気ごとに検査や治療、看護ケアなどの内容およびタイムスケジュールを一覧表にしたものを言います。わが国には1995年頃から導入され徐々に普及してきました。クリニカルパスの使用は、患者さんにとっては診療の予定が分かりやすいという利点があり、医療者にとっては科学的根拠に基づいた標準的な医療の実践、医療スタッフ間での情報の共有、チーム医療の推進に役立ちます。クリニカルパス使用の増加は、内容の分析・見直しにもつながり、医療の質の向上にもつながります。
考察
 2021年度のクリニカルパス利用率は28.0%で、前年から0.9ポイント増加しました。2020年度はCOVID-19による、急を要しない検査入院等が減少しましたが、2021年度は十分な感染対策を実施し入院を受け入れたこと、また白内障手術の増加したため、微増したと考えられます。
 当院では2002年にクリニカルパス委員会を立ち上げ、クリニカルパスの作成と活用に取り組んできました。2019年2月の電子カルテ更新に伴い、新しいクリニカルパスシステムへ移行し、BOM(Basic Outcome Mastr)およびMEDIS(看護実践用語標準マスター)の導入も行いました。電子化されていないパスの電子化を推進し、アウトカム評価の実施と評価結果のカルテ記録を行っています。
 2021年度は、バリアンス分析から、フレキシブルパス設定を行っている、TCS検査で、検査からポリープ切除へ移行する場合の操作に不備があることから、移行操作の周知を行いました。
 今後もバリアンス分析を継続し、クリニカルパスの改善、新たなパス作成を、より適切な運用をすすめたいと思います。

褥瘡新規発生率

分子・分母
 分子:入院後に新規に発生した褥瘡患者数(1名の患者が複数発生しても、患者1名として数える)
 分母:調査月の新入院患者数+前月最終日在院患者数
備考(除外項目等)
 入院後に新規に発生した褥瘡を対象としています。DESIGN-R2020で評価。
 2021年度からは医療機器による褥瘡は含めない。
指標の説明
 褥瘡予防対策は、提供されるべき医療の質の重要項目であり、全身状態、栄養管理、ケアの質評価に係わる指標です。
指標の種類
 アウトカム
考察
 2021年度は前年度と比較して発生率が低下しました。
 改善要因として、①エアマット管理システムを改善して、高機能エアマットをレンタルで導入したこと ②褥瘡発生率が高い病棟に対してWOCN(皮膚・排泄ケア認定看護師)が学習会等重点的に介入したこと、が挙げられます。しかしMDRPU(医療機器関連圧迫創傷)の発生数を入れると、発生率は1.55まで上昇します。2020年度はMDRPU込みの発生率で1.54(褥瘡のみは1.38)であったため、前年より悪化したとも言えます。
 今年度も引き続き褥瘡発生率を前年比と比較して低下を目標にします。そして、MDRPUの発生率低下にも取り組んでいきたいと考えています。
 なおMDRPUの発生率全国調査は、推定発生率0.24%2) となっています。
参考文献等
 1)日本褥瘡学会編:褥瘡予防・管理ガイドライン(第4版),20015.
 2)日本褥瘡学会編:ベストプラクティス医療関連機器圧迫創傷の予防と管理,2016.