記録の指標

退院後2週間以内のサマリー記載割合

分子・分母
 分子:退院後2週間までの退院サマリー作成数
 分母:退院患者
指標の説明
 退院時サマリーは、患者さんの病歴や患者さんが入院時に受けた医療内容のエッセンスを記録したものです。サマリーの速やかな作成は、入院医療と外来医療の連携を進め、医療サービスの内容を向上させます。このように退院後一定期間内に退院サマリーを作成することは、医療の質を表しています。
指標の種類
 プロセス
考察
 2014年度の診療報酬改定で診療録管理加算の医師サマリー記載率要件が2週間以内90%以上と変わりました。JCEP(臨床研修評価機構)はより厳しい要件(退院後1週間以内の記入)を要求しています。そういった意味からも、迅速かつ質の高いサマリーの作成が求められています。
 2022年度は、95.4%と前年と比較して0.4ポイント増加しています。3年継続して95%を超えていますが、さらに期間内記載率100%を目指して、サマリーの早期作成の重要性の確認、医師事務作業補助者による支援等、これまでの取り組みを継続していきます。

医師記載の問題リスト記載割合

分子・分母
 分子:入院患者のうち問題リスト記載件数
 分母:入院患者数
備考(除外項目等)
 入院5日以内の記載を対象
指標の説明
 POS(Problem-oriented medical system:問題指向システム)は、「患者さんの問題点を中心に、その問題解決をめざして診療する」という考え方で診療録を記載するシステムです。POSのPは患者さんの抱えるProblem(問題)のPであるとともに、Patient(患者本人)であるPerson(人)という意味も含みます。この記録システムは、日本の医療現場へ導入されて以来長い年月を経て評価は定まっていますが、当院においては十分に活用されていない現状があります。POSは、①患者中心の医療の実践に繋がる、②チーム医療に寄与する、③臨床教育に寄与する、④患者側への情報提供に有用である等、優れた利点があります。問題リストは、このPOS診療記録構造の中でも中核をなすものです。
指標の種類
 プロセス
考察
 2013年度に当院の医療の質指標に取り上げたところ、2014年度からの記載割合は飛躍的に向上しています。その後は85%以上の記載率を保っており、入院時の患者の病状把握、治療計画のカルテ記載が定着したものと思われます。特に若手、研修医の記載率が高く、医療の質向上のみならず、チーム医療や医学教育にも役立っています。
 2021年度は92.4%とこれまでで最も記載率が高くなっていましたが、2022年度は、89.0%と減少しています。研修医の減少等医師体制の状況も影響があったと思われますが、必要な記載の推進を継続してきたいと思います。

退院療養計画立案率

分子・分母
 分子:退院療養計画書立案件数
 分母:退院数-死亡数
指標の説明
 2007年4月の医療法改正により、入院診療計画書の交付・説明は患者さんや家族に対して、入院後7日以内に文書での交付と説明を行うことが義務付けられました。退院時の療養計画書は、患者さんの退院後に必要な保健・医療または福祉サービスに関する計画書を作成・交付し、退院後の療養が適切に行えるよう適切な説明を行うことが努力義務となっています。
指標の種類
 アウトカム
考察
 退院療養計画の立案率は、前年と比べ1.1ポイント増加しています。経年的に98%前後で推移しており、医師の日常的な努力とともに、退院前・退院時の看護師による記載チェックなど、きめ細かな対応が継続されています。さらに、退院後の療養について必要な指導等の内容についても充実をはかりたいと考えます。

職業歴の記載率

分子・分母
 分子:初診時医師記録に職業歴が記載されている患者数
 分母:6月新規患者(15歳以上)数
備考(除外項目等)
 2016年度から、全日本民医連の定義の変更に合わせて当院の指標の定義を変更しました。
 主な変更点は、分子を「15歳以上新規患者の職業歴記載数」から「初診時医師記録に職業歴が記載されている患者数」へ変更したことです。医師が職業歴を聴取することの大切さを考慮しての変更です。
 また、従来は6月と10月にデータ収集を行っていましたが、2016年度から6月度の1回に変更しました。
指標の説明
 患者の疾病を生活と労働からとらえる医療活動の実践としての指標です。医師記録への職業歴記載率の向上を図ることは、労働環境等から起因する疾病に対して診療の場での適切な診断と治療に繋がっていくことから、重要な指標と言えます。
考察
 2015年度までは初診時問診表に職業歴が記載された割合を指標としており、初診患者の半数程度から職業歴の聴取が認められました。2016年度からは、全日本民医連の定義の変更に合わせて、「医師記録への記載割合」に変更しており記載率は下がっています。
 2022年度は前年より6.39ポイント下回っていますが、COVID-19による発熱外来の開設により、新患数が増大し、発熱外来受診者の職業歴の問診はできていないことが原因と思われます。初診時の症状によっては職業歴まで聴取できていない場合や、全ての新患患者に職業歴が必要かどうかについては、議論のあるところです。記載率の変化だけを見るのではなく、労働環境から起因する疾病への対応を適切に進める取り組みの強化が必要です。